洞川から林道を下ると、黒滝村から下市町へとつうじる峠があります。この峠の頂上に、お地蔵様をおまつりした小さなお堂がたっています。 むかしむかし、佐平という男がおりました。山にはいって木を切り、炭焼きをしてくらしておりました。雪が降って山仕事のできない冬には、木の板をうすくけずって、わっぱ作りに精を出します。 「ほんに佐平は働き者じゃのう。」 村人達のうわさを耳にするたび、妻のキクは心からうれしく思うのでした。 仲のよい二人でしたが、子どもがおりませんでした。 「佐平よ、峠のお地蔵様にお願いしてみてはどうじゃ。」 近所のじさまにすすめられて、二人はお地蔵様に願をかけました。 「お地蔵様、どうかわたしたちに子どもをさずけて下さいませ。」 どんなに疲れて帰ったときでも、二人はそろって峠にのぼり、お地蔵様に手を合わせるのでした。 |
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