またたくまに三十年の年月がたち、小角は役行者と呼ばれるようになりました。
修行のかいあって、五色の雲に乗って自由に空を飛び回れるようになっていました。山の木々やけものたちとも心を交わすことができました。山に住む神たちさえも、行者をしたうようになっていました。
多くの山の中でも、小角は大峰山が一番好きでした。この山に立つとき、なぜか心がやすらぐのでした。
行者は、ある時こう思いました。
「この葛城と大峰の間に、岩の橋をかけよう。二つの峰を通いやすくし、人々のよろこびの場、修行の場とするのじゃ。」
さっそく家来の前鬼・後鬼を呼んで、橋造りを命じました。
初めはためらっていた鬼たちでしたが、人々の幸せを願う行者の心を知り、
「みんな、力を合わせてこの岩橋を完成させよう。」
と協力することになりました。鬼たちだけでなく、行者をしたう多くの人々が手伝うようになりました。 |
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